皆さま、こんにちは。事案分析と解決の設計士、シバケンこと柴田建一です。
2026年5月。博多の街は「どんたく」の熱気に包まれ、活気に満ちあふれています。人生の第4クォーターを全力で走り抜ける63歳の私ですが、今日も地域の医療安全を支える「司令塔」として、現場の皆さまと共に知略を巡らせております。
「今日も一日、何事もなくて良かった」 医療現場の業務を終え、そう胸をなでおろす瞬間は誰にでもあるものです。しかし、その「何事もない状態」を、皆さまはどう捉えていらっしゃるでしょうか。
「安全や安心は、そこにあって当たり前のもの」 もしそう考えているとしたら、それは非常に危うく、脆い砂上の楼閣に立っていると言わざるを得ません。今日は、私が長年警察組織で培い、現在は医療現場の安全設計に注いでいる「安全の本質」についてお話しします。
【1】「空気」のような安全の罠
私たちは、空気がそこにあるとき、その存在を意識することはありません。安全も同じです。何も問題が起きていないとき、人はそれが「当たり前の日常」だと錯覚します。しかし、ひとたび呼吸が苦しくなれば空気の尊さに気づくように、安全もまた、失われた瞬間にその絶対的な価値を突きつけられます。
世の中の治安も、病院の診察室の平穏も、決して勝手に湧き出ているものではありません。そこには、人知れずリスクを排除し、ルールを守り、周囲に目を配っている誰かの「意志」が必ず介在しています。
安全とは、何もしなくても維持される「状態」ではなく、絶え間ない働きかけによって維持される「動的な成果」なのです。
【2】危機は「小さな芽」から急展開する
私が警察署長時代から数えきれないほどの事案対応を行ってきて、確信していることがあります。それは、「巨大な悲劇は、例外なく小さな違和感から始まっている」ということです。
- 「少し態度の悪い患者だな」
- 「いつもと違う、嫌な空気を感じるな」
こうした初期段階の「小さなこと」を、忙しさや油断で放置してしまうと、事態は私たちの見えないところで癌(がん)細胞のように増殖していきます。そして、ある日突然、それは「急展開」という牙を剥くのです。
昨日まで「当たり前」だと思っていた安全が、一瞬にして崩れ去り、もはや個人の手には負えないほど巨大なトラブルへと変貌する。そのときになって慌てて対策を講じても、失われた時間や信頼、そして何より大切な「心」を取り戻すには、膨大なコストと痛みが必要になります。
【3】「無意識」という最大の脆弱性
安全・安心に対して「勝手にあるもの」と無意識でいる組織は、極めて脆弱な状態にあります。なぜなら、そこには「防波堤」が存在しないからです。
対策も心構えもない職場では、外部からの不当な要求やハラスメントという荒波が、何の抵抗もなく最前線のスタッフに直接ぶつかります。一方で、日頃からリスクを想定し、マニュアルを整備し、「何かあれば組織が即座に動く」という心構えができている組織はどうでしょうか。
そこでは、小さな違和感が「情報」として共有され、事案が大きくなる前に「適切な初期対応」という蓋がなされます。リスクをゼロにすることは不可能でも、ゼロに近づけるための「設計」は可能です。この設計図の有無が、組織の強靭さを決定づけるのです。
【4】安全を「掴み取る」ための3つの設計思想
では、私たちはどのようにして安全を「掴み取る」べきでしょうか。設計士の視点から3つの指針を提示します。
1.危機察知力を「研ぎ澄ます」 ・「何もない」ことに安住せず、常に「もしも」を想像してください。現場のスタッフが感じる「嫌な予感」は、正確なリスクアラートです。その小さな芽を摘むことが、安全を掴み取る第一歩です。
2.「やるべきこと」を徹底し、正当性を担保する ・適切な診療手順、誠実な説明、そして組織としての毅然とした一線。これらを完璧に履行することで、業務には「法的に守られるべき正当性」が宿ります。自分たちが正しく立ち振る舞っているからこそ、不当な攻撃に対して堂々と「NO」と言える。これが最強の盾となります。
3.組織一体となって「完結」させる ・安全は個人で守れるものではありません。現場、事務方、経営陣が、一つの設計図を共有し、一体となって立ち向かうこと。一人の職員を孤独にさせず、組織全体で解決へと導く連帯感こそが、安全・安心を掴み取るための強靭な腕(アーム)となるのです。
■結びに:ワンダフルな未来は、あなたの「意志」の先に
安全・安心は、天から降ってくるものでも、地面から湧いてくるものでもありません。それは、皆さまが日々の業務の中で、危機を察知し、仲間を想い、ルールを遵守し、勇気を持って一歩踏み出すことで、初めてその手に「掴み取れる」ものです。
「安全は勝手にある」という幻想を捨てましょう。「安全は自分たちで創り出すものだ」という覚悟を持ちましょう。その覚悟がある職場こそが、職員にとっても患者にとっても、真に価値のある「聖域」となるのです。
ワンダフル! な安全環境の実現に向けて、共に一歩ずつ、確実に設計を進めていきましょう。私はいつでも、皆さまの背後を守る設計士として、共にあります。
【ご相談・お問い合わせ】 「組織の防波堤(マニュアル)を再設計したい」「現場の危機察知力を高める研修を検討している」など、どのようなことでもお気軽にご相談ください。 具体的なケースでお困りの方は、「柴田ガバナンス研究所」公式ホームページのお問い合わせフォームよりご連絡をお待ちしております。元警察署長としての実戦的な知見をもって、全力で皆さまの後ろ盾となります。
事案分析と解決の設計士 柴田 建一(シバケン)
