【医療現場のカスハラ対策】「丁寧な接遇」こそが最大の防御。現場の優しさと安全を守るための新常識

【ブログ本文】

皆さま、こんにちは。事案分析と解決の設計士、シバケンこと柴田建一です。

5月中旬。博多の街は「どんたく」の賑やかさもすっかり落ち着き、新緑が鮮やかに映える初夏の風が吹き抜けています。人生の第4クォーターを歩む63歳の私ですが、今日も地域の医療安全を支える「司令塔」として、現場の皆さまと共に知略を巡らせております。

本日は、医療現場の最前線で皆さまが日々向き合っている「接遇」と、近年大きな課題となっている「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」の本質的な関係について、一歩踏込んでお話しさせていただきます。

【1】現場から直接お聞きする、切実な戸惑いの声

医療安全のアドバイザーとして活動する中で、私は現場の皆さまから次のような切実な戸惑いの声を直接お聞きしてきました。現実に目聞きしてきた、生きた葛藤の数々です。

「これまで研修や教育で『患者さんの不安に丁寧に寄り添うように』と徹底して教えられてきました。それなのに、いきなり立ち振る舞いを『毅然と』とか『厳しく』と言われても、冷たく突き放すようでなかなかできません」 「具体的にどこのタイミングで、どう切り替えればいいのか分からず、現場が硬直した判断しかできなくなってしまいます」

皆さまがこのように悩まれるのは、当然のことです。これまで真面目に、そして丁寧に患者さんと向き合ってきた優しいプロフェッショナルだからこそ、急な意識の切り替えに戸惑ってしまうのです。

【2】丁寧な接遇こそが、最大のハラスメント対策

ここで発想を大きく転換していただきたいのです。ハラスメント対策のために、これまで大切にしてきた接遇の手を抜く必要はまったくありません。むしろ、丁寧な接遇やコミュニケーションの工夫をこれまで以上に徹底することこそが、ハラスメントを未然に防ぐ「最大かつ最強のハラスメント対策」そのものになります。

少し背景をお話しします。医療業界ではある時期から、患者さんを過剰に「患者様」と呼び、いかなる要求にもひたすら耐えて納得させることが接遇のゴールとされてきた風潮がありました。

しかし、世間に広がった「お客様は神様」という行き過ぎた意識は、時に「自分の言うことはすべて正しい」という過剰な特権意識を生み出し、結果として理不尽なハラスメントを引き起こす温床となってしまった側面があります。私は、医療従事者と患者さんは本来、信頼関係に基づく対等公平な立場であるべきだと考えています。ですから、過剰におもねる必要はなく、誠意を持って寄り添うことで、真っ当な信頼関係を築くべきです。

多くの患者さんは、病気への不安や体調の悪さから心に余裕をなくして来院されます。そこで、私たちがプロとして適切な声掛けをし、丁寧な説明を尽くす。この心のこもった工夫を重ねることで、大半のクレームや感情の拗れは、発生する前にその芽を摘むことができます。接遇はそれだけ大事であり、今の時代だからこそ、今まで以上に大切にしなければならない防衛線なのです。

やるべきことを適切にやっているという厳然たる事実があるからこそ、それを超えて理不尽な攻撃を仕掛けてくる一部の悪意に対して、組織や法律が皆さまを全力で守ることができるようになります。誠意ある対応を尽くすることこそが、法律を味方につけるための強力な盾となるのです。

【3】毅然とする前提としての「やるべきこと」とゴムマリ理論

では、誠意を尽くしてもなお、理不尽な言動を止めない一部のハラスメント行為に対して、私たちはどのように対応すべきでしょうか。

ここで重要になるのが、毅然とした対応をする前提として、その時に必要かつ相当な程度の対応や説明を、こちら側がきちんとやり尽くしているかという点です。医療者としての説明や適切な対応を尽くさず、ただ感情的に相手を拒絶してしまえば、それは法的な応召義務違反とみなされ、損害賠償などのトラブルで病院側が極めて不利な立場に追い込まれるリスクがあります。だからこそ、果たすべき誠意をしっかりと尽くしたという厳然たる事実があって初めて、私たちは法的にも正当性を持って、自信を持って「これ以上の要求には応じられません」と弾き返すことができるのです。

この判断の基準となるのが、私が提唱する「ゴムマリ理論」です。

相手の言動やその手段、内容に応じて、私たちがどこまで対応すべきかという範囲は、柔軟に凹んだり膨らんだり(ちっちゃくなったり大きくなったり)変化します。相手の出方に合わせて、その変化した適切な範囲内で、まずは私たちのやるべきことを全力でやり尽くす。 しかし、その凹み膨らんだ基準の中で最善の対応を尽くしたにもかかわらず、それを超えてなお理不尽な言動を繰り返してくるのであれば、その先の言動は「すでにハラスメントである」という考え方です。

自分たちの義務を社会通念上、必要十分なところまで果たしているからこそ、このゴムマリの芯のように、堂々と相手の態度を拒否していいのです。

現場でどこまでを受け止め、どの段階から組織的な対応に切り替えるべきか、その具体的な見極め方や危機察知のポイントについては、こちらの記事でより詳しく、実務に即して解説しています。スタッフ全員で共通の物差しを持つためのヒントになりますので、ぜひこちらも合わせてお読みください。【ペイハラ対策】理不尽な暴言に屈しない!医療現場の誇りと身の安全を守る「シバケン流・防衛カルテの書き方」https://shibaken-poli.com/wp-admin/post.php?post=446&action=edit

【4】接遇とハラスメント対策は、現場を支える車の両輪

これまで学んできた接遇マニュアルや、患者さんに寄り添う心を捨てる必要は一切ありません。むしろ、その工夫された丁寧な接遇こそが、悪意あるハラスメントから皆さまの身を守る最高の防具になります。

ハラスメント対策による職場環境の安全安心の確保は、スタッフの皆さまを守るためであると同時に、患者さんにより良い医療サービスを提供するために不可欠なことです。どちらも医療現場の優しさと安全を守るための、同じ目的を持った車の両輪なのです。

皆さまが安心して最前線に立てるよう、これからも全力でお手伝いをさせていただきます。

【ご相談・お問い合わせ】 私は37年間の警察官人生において戸畑警察署長などの重責を担い、刑事や人身安全対策の第一線で誰よりも多数の事件を手掛け、メディア(警察24時など)にも多数出演し、常に現場目線で様々な経験を重ねてきました。また、財務省や国税庁、預金保険機構への出向も含め、組織ガバナンスと危機管理の実戦に立ち続けてしてきました。現在は、その実戦的な知見を医療安全の設計図として提供しています。

「スタッフの接遇の心を活かしたまま、組織を守るカスハラ対策の基準を作りたい」「現場が迷わないための明確な切り替えの物差しを作りたい」とお考えの医療機関様は、ぜひ「福岡医療カスハラ研究所」の公式ページよりお気軽にご相談ください。現場の現実を見つめてきた専門家として、皆さまの確かな後ろ盾となります。

本日も最後までブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。

事案分析と解決の設計士 柴田 建一(シバケン)

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