【医療安全の新常識】「寄り添う」が言いなりにすり替わっていないか?元警察署長が語る、0.1%の悪質クレーマーと決別し「現場の心」を守るための意識改革

執筆:事案分析と解決の設計士 柴田 建一(シバケン)

皆さま、こんにちは!「事案分析と解決の設計士」こと、シバケンです。

私は刑事として37年間、数々の現場で「人の心の闇」と向き合ってきました。現在はその経験を活かし、医療現場の安全を守るアドバイザーとして活動しています。

日々、全国の医療現場から悲痛な声が届きます。「患者さんから罵倒された」「理不尽な要求を断れず、スタッフが泣いている」。

皆さんは「医療の基本は患者さんに寄り添うことだ」と教わってきましたよね。その言葉は、純粋で美しい。しかし、現場を見ていて私が一番危惧しているのは、「寄り添う」という言葉が、いつの間にか「何をされても耐え、相手の言いなりになること」にすり替わってしまっているという現実です。

👇あわせて読みたい関連記事【医療現場のカスハラ対策】「丁寧な接遇」こそが最大の防御。現場の優しさと安全を守るための新常識https://shibaken-poli.com/wp-admin/post.php?post=459&action=edit ※ハラスメント対策のために接遇の手を抜く必要はありません。誠意を尽くすことの本質をこちらで詳しく解説しています。

1. なぜ今、あえて「救急医療」の現実を語るのか

この記事の内容は、歯科、小児科、一般内科、あるいは介護の現場など、すべての医療・福祉に関わる方に共通するものです。ですが、あえてここで「救急医療」の過酷な現状を例に出させてください。そこには、すべての現場で通用する「本質」が詰まっているからです。

救急医療の現場は、一分一秒が「生」か「死」かを分ける極限状態です。福岡地域では年間10万件を超える救急出動があり、現場は常に飽和状態です。そんな「命のやり取り」の真っ最中に、もし「ペイハラ(ペイシェント・ハラスメント)」が発生したらどうなるでしょうか。

「男の医者は触るな!」「お前じゃ話にならない、もっと偉い奴を出せ!」

こうした理不尽な言動で診療が数分、数十分と止まる。救急現場において、この「時間の空転」は、文字通り「救えるはずの命を危険にさらす業務妨害」に他なりません。

救命の緊急性が最も高い現場でさえ、こうした理不尽がまかり通ってしまっている。だからこそ、救命現場での対策の必然性が問われているのです。救急現場で「断固とした拒減」や「組織的な防衛」が必要であるならば、それはすべての医療現場においても、職員の心を守るために当然なされるべきことなのです。

2. あなたを縛る「三つの鉄鎖」:司法という名の後出しジャンケン

なぜ、皆さんは反射的に謝ってしまうのか。それは、皆さんの背後に「医療側が常に不利になりやすい構造」があるからです。私はこれを、現場を縛る「三つの鉄鎖」と呼んでいます。

  • 「生存可能性」の絶対化:たとえ救命の確率が数%であっても、そのわずかな機会を損なえば賠償責任を問われるかもしれないという圧力。
  • 「プロセス責任」の厳格化:結果がどうあれ、説明や手順が一つでも欠ければ不法行為とされるかもしれないという重圧。
  • 「自己決定権」の死守:緊急下であっても、患者側の選択肢を確保しなければ法的責任を免れないという恐怖。

司法は、皆さんが戦っている「極限の現場」を、後から冷静な場所で、時間をかけて検証します。この「後出しジャンケン」のような構造が、皆さんに「とりあえず謝って、波風を立てないでおこう」という過度な防衛本能を植え付けてしまったのです。

しかし、その「とりあえずの謝罪」が、実は皆さんの心を粉砕し、組織を崩壊させる毒になる。刑事の眼で見てきた「加害者」たちは、その隙を見逃しません。「謝ったということは、お前たちが悪いんだな」と、さらにマウントを強めてくるのです。

3. 限られた「現場の力」を誰に注ぐべきか:0.1%への決別

ここで、理論的に考えてみましょう。医療現場に投入できる「力」――すなわち、医師や看護師の数、時間、そして皆さんの「心のエネルギー」――は無限ではありません。

皆さんが日々向き合う患者さんのうち、圧倒的多数(たとえるなら99.9%)は、医療者の皆さんに感謝し、共に病と戦う善良な市民です。しかし、残りのほんのわずか、0.1%に満たない悪質なクレーマーやペイハラ加害者が存在します。

今、多くの現場で起きているのは、「この0.1%の対応に、皆さんの貴重なエネルギーの半分以上が奪われている」という異常事態です。理不尽な怒鳴り声に耐える時間、終わりのない説明を繰り返す時間……。これらは、本来寄り添うべき「99.9%の善良な患者さん」のために使うべき大切な資源を、横領されているのと同じことなのです。

悪質な0.1%に対して「言いなり」になることは、決して優しさではありません。それは、救急医療という社会インフラを、内側から腐らせる原因になります。

4. 本当の「寄り添い」とは、毅然とすることである

本当の「寄り添い」とは何でしょうか。それは、相手の不当な「わがまま」を聞くことではありません。患者さんが抱える「苦痛や不安」を共有し、医学的に最善のゴールへ導くことです。

もし、患者さんが暴言を吐き、医療を妨害するのであれば、それはもはや医療の対象ではなく、「秩序を乱す者」です。そこで皆さんが毅然とした態度を取ること――例えば「その言葉遣いでは診療を継続できません」とはっきり伝えること――は、決して冷たいことではありません。むしろ、病院という安全な空間を守り、他の善良な患者さんの診療時間を確保するための「究極のホスピタリティ」なのです。

日本医師会でも、①危機察知力、②組織的対応、③情報共有、④境界線の判断、を課題として挙げています。現場のスタッフ一人が抱え込む必要はありません。「これはおかしい」と察知したら、すぐに情報を共有し、組織として「ここからは許さない」という境界線を引く。それが、私たちが提唱する「意識改革」の核心です。

5. 【本年10月施行】法は皆さんの味方になる

皆さんに伝えておきたいことがあります。本年10月から、改正された「労働施策総合推進法」が施行されます。これにより、病院の事業主(理事長や院長)は、皆さんがハラスメントで傷つかないよう、「雇用管理上必要な措置を講じなければならない」義務を負うことになります。

つまり、「患者さんなんだから我慢しろ」とスタッフに強いる病院は、法律違反になる時代が来るのです。2023年9月には、カスハラによる労災認定基準も明確化されました。「自分たちが守られるのは当たり前の権利だ」と胸を張ってください。

私はこれまで、刑事として多くの被害者を守ってきました。今度は、命を救うために戦う皆さんの「盾」になりたい。皆さんが「記録」という武器をカルテに残し、私のような専門家に相談してくれることで、一つひとつの事例が「組織の知財」となり、加害者を寄せ付けない強固な防衛インフラへと変わっていきます。

6. おわりに:白衣の下の「誇り」を守るために

最後にお伝えしたい。救急医療、そしてすべての医療に従事する皆さんは、白衣を着た「奉仕者」である前に、法によって守られるべき一人の「尊い人間」であり、「労働者」です。

皆さんの笑顔が消え、心が擦り切れてしまったら、日本の医療は終わります。皆さんの心が健康であってこそ、初めて患者さんに質の高い医療を提供できるのです。

「とりあえず謝って収める」のは、今日で終わりにしましょう。「寄り添う」べき相手を見極め、不当なマウントには毅然とNOを突きつける。

そのための具体的な防犯戦術や医療ガバナンス(組織統治)の仕組みづくり、そして現場が迷わないための明確な境界線の構築は、私、シバケンにお任せください。戸畑警察署長などを歴任した刑事37年の実戦経験と、財務省や国税庁への出向で培った危機管理の知見、そして福岡市医師会安全対策サポートアドバイザーとしての実績をもって、現場の接遇精神を活かしたまま、病院経営の実態に即した実戦的なハラスメント対策システムを設計し、皆さまの「正義」とスタッフの心の健康を全力で守り抜く後ろ盾となります。

組織のリスク管理や安全安心の確保に不安を感じておられるなら、どうぞ一人で抱え込まず、お気軽に私、柴田建一までご相談ください。

皆さんの誇りある仕事に、心からの敬意を込めて。今日もお疲れ様です。明日もまた、胸を張って仕事に向かってください。

福岡の、 全国の医療現場に、幸あれ!シバケンでした。

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