【危機管理のプロが直言】悪徳行政書士の非弁活動から病院を守る!医療機関が「凡事徹底」で実践すべきコンプライアンスと信用防衛策

目次

はじめに:医療現場を揺るがす「小さな違和感」の正体

日々の医療提供に追われる病院経営者や管理職の皆様は、窓口に持ち込まれる「情報開示請求」や「自賠責保険の請求手続き」に対して、どれほどの注意を払われているでしょうか。

「手続き自体は定型的なものだから、委任状さえ揃っていれば問題ない」 「請求金額も数万円程度だし、事務的に処理しておこう」

もし、このような認識を持たれているとしたら、それは組織の根幹を揺るがしかねない「サイレント・リスク(静かなる危機)」を看過している可能性があります。

先日、私のもとにある医療機関から切実な相談が寄せられました。それは、患者の代理人を名乗る「行政書士」の対応に関するトラブルでした。結果から申し上げれば、その業者は過去に非弁活動(弁護士法違反)などで逮捕歴もある、いわゆる「悪徳業者」だったのです。

本稿では、この具体的な事例を紐解きながら、一見すると「小さなトラブル」に見える事象の裏に潜む本質的な危機、そしてこれからの時代に病院経営者が持つべき「時間軸の長い危機管理意識」と「凡事徹底」の重要性について、危機管理アドバイザーの視点から深く解説します。

1. 事例検証:悪徳行政書士による非弁活動と病院窓口の混乱

まずは、今回相談のあった事案の概要を共有します。同じような「違和感」を覚えた経験のある医療機関は決して少なくないはずです。

持ち込まれた3万円足らずの開示請求

ある患者の代理人として、法律専門職であるはずの行政書士事務所から「個人情報保護法に基づくカルテ等の開示請求」および「自賠責保険に関わる書類請求」がなされました。手数料や実費を含めても、金額にして3万円に満たない極めて小規模な手続きです。

しかし、その行政書士事務所の対応は、最初から最後まで極めて不誠実なものでした。

  • 連絡の徹底的な無視: 病院側から手続きの確認や不備について電話を入れ、「折返し連絡を欲しい」と何度伝えても、一切の連絡がありません。
  • 費用の未払い: 開示に伴う当然の費用支払いに対しても、引き延ばしや無視を決め込みます。
  • 逆切れと無知の露呈: ようやく連絡がついたと思えば、「そうした費用はすべて自賠責保険の中に含まれて支払われているはずだ」と、法律の専門職とは思えない的外れな主張を展開し、自らの無知をさらけ出すような高圧的な態度で病院側を威圧してきました。

業者の素性を調べた先に判明した「逮捕歴」

あまりの対応の悪さに不審を抱いた病院側が、行政書士会に苦情を申し立てたものの、明確な対応は得られませんでした。そこでさらに踏み込んで該当の業者について調査を進めたところ、驚愕の事実が判明します。

その業者は、行政書士の職権を大きく逸脱し、本来弁護士にしか許されていない報酬目的の示談交渉等を行う「非弁活動(弁護士法第72条違反)」に関与し、過去に刑事逮捕されているような、極めて素性の良くない人物だったのです。

2. 小さな綻びが医療現場にもたらす「二次被害」

金額的な被害だけで見れば、「3万円足らずの未払い」に過ぎないかもしれません。しかし、この事件が病院に与える心理的・組織的影響は、金額の多寡で測れるものではありません。

「色眼鏡」という名の不信感の連鎖

医療機関は、患者、家族、地域のさまざまなパートナー企業、そして各種代理人など、多種多様な人間関係の「信頼」の上で成り立っています。 こうした悪徳業者に一度でも引っかかってしまうと、病院スタッフの心には以下のような防衛本能(あるいは疑心暗鬼)が芽生えます。

  • 「次に領収書や開示を求めてくる代理人も、怪しい業者なのではないか?」
  • 「患者さん本人からの要望であっても、裏に誰かいるのではないか?」

このように、すべての関係者を「疑ってかかる(色眼鏡で見る)」ようになってしまえば、本来スムーズに進むべき業務に急ブレーキがかかります。 信頼関係が崩壊し、「信用できないから取引や対応を拒否する」という極端な対応が増えれば、結果として医療の円滑な提供そのものが遅れ、地域医療全体への取り組みに大きな支障をきたすことになります。これこそが、悪徳業者がもたらす真の「二次被害」です。

3. 「是々非々」で突き詰める病院と、見過ごす病院の決定的な格差

今回の相談において、私が非常に感銘を受けたのは、相談を寄せてくださった病院の姿勢でした。

経営の命運を分ける「意識の差」

多くの病院では、数万円のトラブルや連絡の手間を嫌い、「面倒だから今回は勉強代として処理しよう」「関わると時間がもったいない」と、うやむやに処理してしまう傾向があります。

しかし、今回私が相談を受けた病院は違いました。 「金額の大きさではない。是は是、非は非として、おかしなものは徹底的に突き詰める」という強い意志を持たれていたのです。

この「小さなことでも妥協しない姿勢」がある病院と、そうでない病院との間には、数年後に目に見える形で巨大な格差が生じます。

危機管理能力と「メリハリ」の付け方

日々の業務で忙殺される中、すべての事象に全力で立ち向かうことは不可能です。だからこそ、経営者や幹部には「危機のメリハリを見極める能力」が求められます。

「単なる事務ミス」なのか、それとも「組織の安全や法令遵守(コンプライアンス)を脅かす意図的な不正」なのか。 後者であると判断したならば、たとえ目の前の実害が小さくとも、毅然とした態度で徹底的に追及する。この峻別(しゅんべつ)ができるかどうかが、組織を守る防衛力そのものになります。

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4. 長い時間軸で見る「安全・安心」と「信用」の本質

コンプライアンス(法令遵守)や危機管理というキーワードは、実践したからといって、明日すぐに売上が倍増するような「即効性のある成果」は出ません。しかし、時間軸を長く取って俯瞰したとき、その重要性は計り知れないものとなります。

一時が万事:目に見えない資産の維持・継続

「一時(いちじ)が万事」という言葉があります。一つの小さな行動や対応を見れば、その人のすべての行動、あるいはその組織のすべての体質が推し量れるという意味です。

窓口に持ち込まれた不審な開示請求を「面倒だから」と見過ごす病院は、きっと医療安全の現場における小さなヒヤリハットも見過ごしているでしょう。職員の労務管理における小さな違和感も放置しているでしょう。 逆に、3万円の請求であっても「非弁活動の疑いがある悪徳業者」に対して是々非々で臨む病院は、医療ミス防止への取り組みも、個人情報の管理も、すべてにおいて高い基準を維持し続けているものです。

「急がば回れ」と「凡事徹底」

現代は、かつてないほど企業や法人のコンプライアンスが厳しく問われる時代です。SNSの普及により、一つの小さな不正や対応の遅れが、一瞬にして病院の「信用」を失墜させます。

「信用」を築くには何十年もの歳月が必要ですが、失うのは一瞬です。 目先の効率や利益にとらわれず、基本を忠実に守り抜くこと。これこそが「急がば回れ」であり、当たり前のことを徹底して行う「凡事徹底」の本質です。 基本だからこそ、そしてめんどくさいからこそ、逆に手を抜かずにしっかりやる。この姿勢を組織全体に浸透させられるかどうかが、時代の荒波を生き抜く安全・安心な環境の継続につながるのです。

5. 危機管理における「気持ちの姿勢」と峻別力

悪徳業者や不当な要求を見抜き、それを毅然と排除する「峻別力」は、単なる知識の量だけで身に付くものではありません。それは、組織を預かる人間の「気持ちの姿勢」そのものです。

私自身、これまでのキャリアにおいて、一貫してこの「凡事徹底」と「是々非々」の姿勢を貫いてきました。 警察組織において数々の犯罪捜査や地域治安の維持に奔走した時も、あるいは国税庁や財務省といった中央官庁の重要な職務において国の根幹に関わる業務に携わった時も、常に目の前にある「小さな違和感」を見逃さず、めんどくさいことほど根源まで突き詰めることで、大きな不正や危機を未然に防いできました。

職域や時代が変わろうとも、組織を守るための「基本の徹底」という原則は、今も昔も一切変わりません。

結び:医療機関の「信用」を守るパートナーとして

医療は、人と人との究極の信頼関係の上に成り立つ高潔な業務です。だからこそ、そこにつけ込もうとする悪徳行政書士や、法律を軽視する不誠実な業者に対しては、業界全体としても毅然とした態度を取るべきです。

今回ご紹介した事例のように、「何かおかしい」「対応が不誠実で不安だ」と感じる業者が現れた際、それを個人の判断で放置せず、組織としてコンプライアンスの刃を研ぎ澄ますきっかけにできる病院は、将来にわたって地域から愛され、信頼され続けるでしょう。

とはいえ、日々の医療現場で、法律違反(非弁活動)の有無や、相手方の隠れた素性までを正確に見極め、交渉を進めるのは容易なことではありません。

  • 「窓口への要求が、正当なものかどうかわからない」
  • 「不審な業者から高圧的な態度を取られて困っている」
  • 「病院全体のコンプライアンス体制や危機管理能力を底上げしたい」

そうしたお悩みや、日常の「小さな違和感」がございましたら、どうぞ遠慮なく私にご相談ください。 元警察署長としての現場指揮経験や、国税庁・財務省等での組織管理・ガバナンス構築のノウハウを活かし、皆様の病院が「目に見えない信用」を強固に守り抜き、安心・安全な医療を提供し続けられるよう、全力でサポートいたします。

まずは小さな疑問からでも構いません。組織の盾となり、未来を守るための第一歩を、共に踏み出しましょう。

【福岡市医師会 安全対策支援アドバイザー / 柴田ガバナンスリサーチ代表 シバケン】

👉 公的エビデンス:厚生労働省の公式指針はこちら 組織として講ずべきハラスメント対策の公的な基準については、厚生労働省発出の以下の指針をご確認ください。 【厚生労働省】労働施策総合推進法に基づく「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」 (https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf

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